旅は、自分のなかの“思い込み”の殻を破ってくれる絶好の機会だ。

それも、ごくごく何気ないこと、言ってみれば誰かに熱く語ったことはないけれど(語るほどのことではないといった方が近い) 、長年心のどこかにムズムズと引っ掛かっているようなことを、あっけなく解決してくれるような風習、考え方などに出会えた時は、本当にうれしい。
しかも、名所といわれる場所の風景は忘れても、そういう“余談的=その他的”体験は、割と覚えているものだ。

スリランカの人は、
アイスティーは飲まないらしい。

イギリス統治時代、セイロンと呼ばれていたスリランカ。スリランカと言えば、やはり紅茶だ。SriLankan Airlines のCAさんたちは、飲み物を配る時、わざわざ「Ceylon Tea ? or Coffee?」と言っていた。日本で言えば、お茶のことをわざわざ「静岡茶」とか「熊本茶」とか言っているのと同じこと。よほどプライドがあるんだろうな。

あ、ちなみにスリランカの人たちはアイスティーはほとんど飲まないそう(現地ガイドさん情報)。海外旅行者向けのレストランやホテルでも、ほとんど見かけなかったです。

主役の紅茶の、横の添えモノが気になった。

で、パッケージツアーの定番、特産品である紅茶の工場訪問(目的はお土産購入)でのこと。ひと通り説明を聞き、カフェ兼売店のような場所へ。その工場で作っている紅茶は高級品で、現地のスーパーなどには出回らず、レストランもしくはイギリスなどへの輸出がほとんどだといい、お値段も少々高めらしい。

そもそも私はコーヒー派で、普段紅茶を飲むことは、まずない。とはいえ「紅茶の国にきて、紅茶をまったく買って帰らないというのもなにかなあ」なんて日本人っぽいことを考えていた。

そんな時、試飲用に出された紅茶の横に、コロンと置かれた黒いカタマリに目がいった。砂糖の類だろうなと想像はついたが、それまでいろいろ説明してくれていたので、一つぐらい質問を投げなくてはと思っていた私は、「これは何ですか?」と尋ねてみた。「日本の黒砂糖のようなものだ」という、まあ想定内の答え。「のようなもの」というのが気にはなったものの、それほど興味はなかったのでそのままスルーした。

茶葉工場。ここで10数時間寝かせて乾燥させるという。

入れなくていい、かじればいいんだ!

一方頭の中には、 “他人にはどうでもいいことだが、私にとってはそれなりに悶々とする例のトゲ” が現れつつあった。
私は元々甘い物があまり好きではない。好きではないのだが、それでも疲れているときなどちょっとだけ糖分が欲しいと思うことがある。そう、最初の一口だけ甘かったらいいのに、と。
当たり前だが、砂糖を入れれば飲み干すまで甘い紅茶を飲まざるを得ない。だからといって一口だけ飲んで残すのは失礼だろう。

入れるべきか、入れざるべきか・・・・・・。

サリーを着たかわいらしい売り子さんたち(スリランカの女性は綺麗な人が多い!)による商品説明も聞かずに、目の前に出された紅茶と不毛なにらめっこをしていると、隣に座っていたガイドさんがその塊をかじったではないか。

テーブルのまんなかに置かれている茶色のモノが、それ。

黒砂糖もどきの正体は「Jaggery(ジャガリ)」。

「ほほう。その手があったか」

ガイドさんに詰め寄ると、現地ではそうやって飲むらしい。もちろん中に入れてもよいのだが、かじっては飲んで、かじっては飲んで、とやっていく。
これはある意味、私の理想だ。一口だけかじって、口の中を甘くして、あとはお茶をストレートで飲めばいいのだから。

これが、ジャガリ。黒糖にショウガ的なスパイシーさをほんの少し加えたような味だった。

日本に帰ってから調べてみたところ、この黒砂糖もどきは「ジャガリ」という名前だった。スリランカで採れる孔雀椰子の蜜を煮詰めて作るらしい。
スリランカでは、紅茶のほか料理にも使ったりとメジャーな存在とのこと。健康にもいいらしい。ネットでもまだ売っているところがほとんどなかったので、もしかするとこれから日本でも流行るかも!?

紅茶の、そのとなりの添え物に出会ったスリランカ旅。でも、買ってこなかったんだなあ。ジャガリを(かなり後悔)。

旅では、ほかにもたくさん発見があったので、それはまた別の機会に!
アユボアン!(スリランカ語のごあいさつ、なんかカワイイ)

著者

Amano Jack

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